「ハッ!?」

 そして赤い浴衣の座敷童は目を覚ました。

 うとうとしている間にすごく壮大な夢を見ていたような……?

「ねえちゃーん」

 どこかで幼い忍が呼んでいる。

 陽気な昼下がり、かやぶき屋根のお屋敷にて。縁側近くの柱に背中を預けて寄りかかるように座っていた座敷童はゆっくりと立ち上がると、首をひねりながらも声のする台所へと向かっていく。

 おかしい。

 なんか因果の糸の連なりが奇怪だ。

「姉ちゃんどこー?」

「どうしたの忍、そこは生ゴミ用のポリバケツよ」

 あっ、姉ちゃん! そんな返事に聞き覚えがあった。予測できたのではなく、覚えがあったのだ。ますます違和感は強くなる一方。

 単なる夢じゃないような気がする。だけど夢は起きて数分もすれば輪郭が崩れて思い出せなくなるもの。後には得体の知れないモヤモヤしか残らない。

「もー、姉ちゃんがいないと始まらないでしょ」

「?」

 彼女の中にある百鬼夜行試製三九式座敷童が告げている。

 この因果の糸は一本ではない。いや正確には一本ではあるんだけど、折り畳んだ長い長い糸を平行に並べているように、見た目の上では何本かが重なり合っている。

「こっち来て、とにかくマッハで来て!」

 ぐいぐい手を引っ張られていった先では、

「でっかい豚も来て」

「ぶー、任せておいて」

「『白き女王』もちょっと来て」

「うふふ、あにうえと戯れる事ができるのでしたら何だって」

 行き先はもちろん(?)広いお茶の間。そして居並ぶ面々を見て、ぼんやりと座敷童は思う。

 ああ。

 やっぱり一人だけ後で意味が分かるよ的な訳知り顔で微笑む地獄のツインテールがいるし。

 夢で見たとか小さなスケールでなく、こりゃあひょっとしてこの宇宙そのものの成り立ちに関わるすんごくでっかい話なんだけども、これってもはや二回目ですら、ないの……かも……?


「よし! 全員揃ったところで、これから『ごーこん』を始めます!!」


 みっしょん。

 パラドクスを阻止しよう。

 多分本編と違ってあいつとあいつがくっついたから運命が全力全開で過剰反発してこんな目に遭ったのだ。本来は体を守るための機能が誤作動を起こすアナフィラキシーショックみたいにな!!