内幕隼
うちまくはやぶさ。東京の刑事さん。妖怪嫌われ体質以外はいたって普通な公務員。あと感性が若いのか、年端もいかない少女達となんか仲良くなる。ちなみに実家はインテリビレッジと呼ばれる超高級ブランド田舎にある酒造所。
菱神艶美
ひしがみえんび。謎の女子中学生で、自称フリーランス。いわくありげな殺人事件の現場にふらりと現れる推理マニア。
過去に言動やファッションなどで黒歴史あり。また『菱神の女』の一員で、その才能が開花すると地球人類の四分の一が死滅するのだとか。
二日目
午前〇時~一時
【隼の手帳】
・消灯。
・寝室組を中心に、少しずつ眠気に負けて意識の落ちる者が出てくる。
・初友鳴が眠気覚ましのコーヒーを呑むため、リビングのミルとサイフォンを借りに来る。無意識なのか、コーヒーの淹れ方は八井敏の好みと似ている。
【えんびめも】
・艶美ちゃんは寝ない!
・メイドの松島恋がリビングを離れる。何かモヤモヤ引っかかる模様。
・メイド、眠気覚ましに明かりを持ったままシャワーを浴びる(二回目)。
・刑事さんはやはり興味ないふりしてガン見であった(怒)。
・シャワーの派手な水音に、寝室組だった夫人の明逢が苦言。これでは眠れない!
艶美
「……、」
隼
「またかよ。決着はついたはずだ!」
艶美
「気を取り直して。ここでのポイントは、メイドさんのシャワーシーン。全面ガラス張りとはいえ、湯気がつくと曇っちゃう事もある訳で」
隼
「電気については明るい方が良いに決まっている。だけど体内時計調整プログラムとかで、タイマーが勝手に明かりを消してしまうんだとか」
艶美
「うん、それが普通の感性。でも、だとすると?」
隼
「ある人物の言動にチェックだ。一見すれば普通だけど、今は殺人事件の真っ最中。そんな願いを抱くかな」
午前一時~二時
【えんびめも】
・刑事さんが寝てしまうzzz
・パッチリ艶美ちゃんに呆れられる。
艶美
「今だから言うけど、刑事さんの寝顔が可愛くってさあ……」
隼
「う、うるさいな。どの道、長期戦になればどこかで眠らなくちゃならないだろう」
艶美
「でも刑事さん、私の事は信用してくださったようで。ピストル式のクロスボウなら比較的弦も弱いし、子供でも使えるはずなのに」
隼
「いやまあ、お前は早い段階でシロだって除外していたからな」
艶美
「……、」
隼
「とまあ、ここからは交代で仮眠を取る事になったんだが」
午前四時三〇分
【隼の手帳】
・目を覚ますと、艶美の姿がない。
隼
「まずい事になってきた訳だ。辺りは真っ暗闇で静まり返り、明かりがないから透明な壁の向こうも見渡せない。
兎にも角にも消えた艶美を捜すしかない。
リビングには他にも何人か寝ていたが、起こすのは避けた。
理由は単純で、同行を願った誰かが犯人なら目も当てられないからだ」
午前四時三〇分~五時
【隼の手帳】
・第三者の懐中電灯らしき光を目撃。ひとまずそちらに向かう。
・厨房で艶美を見つける。
・顔面包帯の執事、狩場が朝食の仕込みを始めようとしている。狩場は艶美のためにホットミルクを用意していた。
艶美
「という訳で、実際には特にトラブルとかではなかったのでした!」
隼
「こいつ!」
艶美
「ごめんごめん。たださ、執事さんが厨房に向かうのが見えたから、つい、ね」
隼
「?」
艶美
「これは実際には起こらなかったけど、可能性の話。もしもクロスボウと鍵束を持った犯人が私達を皆殺しにするつもりなら、実はクロスボウより鍵束の方が怖いんだ。
だって、厨房のガスをひねって火事を起こしてから一人で外へ逃げて、玄関を施錠しちゃえば私達はみんな焼け死んじゃうんだから」
隼
「……マジですか」
艶美
「火事を起こすだけなら他にもやりようはあるんだけどね。何にしても火元に誰かが近づく時は監視しておきたいよね、と」
午前六時~六時三〇分
【隼の手帳】
・狩場の作った朝食を食べる事に。
・艶美、目玉焼きの横にあったウィンナーを一本こっちの皿に載せる。
・部屋にこもって出てこない者もいる。
【えんびめも】
・おら! 餌付けの時間だよ!!
・車椅子の長女、看破がシャワーを浴びる。
・包帯執事の狩場が看破をサポートしてるよ。
隼
「何気に重要なのは、看破のシャワーを狩場がサポートしたところだ。同じ家族で女性の、明逢を除外してまで」
艶美
「二人は恋仲……なんてロマンチックな話でなければ、苦い可能性が出てくるね」
隼
「看破と明逢は仲が悪い」
艶美
「親子と呼ぶには歳が近すぎるのを考えると、収斂の若い再婚相手で子供達とは上手くいっていない、って感じかな」
午前七時~八時
【隼の手帳】
・相変わらず外は嵐。固定、携帯共に電話は通じない。
・息抜きに長女の看破が占いを披露する。
・初友鳴は数ある偽名の一つだが、まだ本名は見えてこない。企業イメージを引きずり落とす職業的身分詐称のプロで、過去には八井商事も痛い目を見た。……らしい。
・星見の家では隠し事をなくして一族が一つの塊となる事で、過去から未来まで見通す力を高めるとの談。
・ただし看過は占いに振り回される人を小馬鹿にする節がある。本当に百発百中で全知全能なら自分は車椅子生活にはならなかったし、執事の狩場の怪我も事前に防げたはず、との事。
【えんびめも】
・メイドの恋が寝坊。慌ててシャワーを浴びる(三回目)。
・刑事さんは安定のガン見だぜ(うがー!)。
艶美
「……どうしよっかな、もう」
隼
「いやいやなら噛み付く事はないじゃないか、シャワーシーン!」
艶美
「事態は全く好転しない二日目の朝。じわじわと異常な日常を享受し始めている自分がいるね」
午前八時~八時一〇分
【隼の手帳】
・現場保存のため、玄関ホールにある収斂の遺体を確認。誰かが手を出した様子はない。
・収斂が死亡前に数メートル這って移動したのが気になる。
・収斂の遺体をどかして地階床の大理石を調べると、パネルが外れる。地下への入り口を発見。
【えんびめも】
・収斂はここの『戸締まり』をする前に殺害され、また犯人もこの扉には気づかなかったみたい。つまり地下への扉は施錠されていない。
艶美
「そして館モノのお約束、隠し通路でございます! お次は何だ、館が回るのか、持ち上がるのか、平行移動するのか!? 乞うご期待!」
隼
「うるせえなもう。あと、重要なのは犯人がこの扉を見落としている点だな」