オリンポスの郵便ポスト


※本ページ内の文章は制作中のものです。実際の商品と一部異なる場合があります。
※実際の作品には挿絵イラストが入ります。


 前略

 お父さん、お母さん。お元気ですか。

 私は一応、元気、かな。こんな風に誰かに手紙を宛てるの、随分と久しぶりなことだと思います。ひょっとしたら、急な手紙で驚かせてしまいましたか。

 えっと、実は最近、私、面白い人と会ったんです。いえ、恋人とかじゃないですよ。

 どこから話をしようかな。えーっと、二人は聞いたことがありますか。

 オリンポスの郵便ポスト。

 この星に古くから言い伝えられている都市伝説みたいなものです。この赤い大地の遥か西の果てにあるという「オリンポス山」。その山のてっぺんには郵便ポストがあって、そこに投函した手紙はどこへでも、誰にでも、神様が届けてくれるのだそうです。

 そう、たとえ天国へでも。

 どんなに会いたくても、もう会うことのできない人。伝えたくても伝えられない言葉。でも、オリンポスの郵便ポストは届けてくれるんです。とてもロマンチックな話ですよね。誰がいつ、言い出したのかは分かりませんが、信じている人、結構多いみたいです。

 私が出会った彼もそんな一人でした。

 その彼と一緒に過ごした百九日間の旅。その始まりは小さな郵便局からでした。